『ロード・ジム』の問題点

社本 雅信 記

  「パトナ」号が沈みかけていると判断して飛び降りたジムの行為が船員の「労働原理の規範」にどのように違反しているか、衝突隔壁が水 圧でふくらむのを見たというジムの言葉を信じるならば、ジムに下された「海員免許取り消し」という判決は重すぎはしなかったか、という問 題提起をめぐって、逸見船長は英国の海員法や船の構造を説明しながら、現実的な解答を試みた。
そのほか、この会合で話し合ったのは次の点である。

1. ジムが下甲板にいたとき、L字形断面の鉄製金具から手のひらほどの鉄さびがはがれて落ちたとあるが、「パトナ」号は紅海において
  はたしてほんとうに沈没船に接触したのだろうか。

2. パトナ号は沈没を免れて船首を下げて漂っていたところをフランスの砲艦に発見されて、アデン港に曳航されたとある場面に関して、
  このようなとき、現実にどのような曳航の仕方をするのか。

3. パトナ号には、船長、機関長、二等機関士、補助機関係、それと一等航海士のジムの五人の白人の高級船員が登場するが、二等航
  海士、三等航海士はいない。パトナ号は800人もの聖地巡礼団を載せた相当大きな汽船であるのに、こういうことは、船員構成上実際に
  ありうることだろうか。

 反省点として、参加者が思い思いに疑問点を出し合った今回の研究会は、まとまりに欠けたということである。
吉田徹夫先生が指摘されたように、今後は誰か一人が研究報告をして、その報告をめぐって、意見を出し合うような形にすべきであろう。

 アン・レイン先生がオーストラリアからお帰りになったこと、コンラッド研究の第一人者である吉田先生が研究会に参加していただけ
るようになったことは、現役の船長職にある逸見真氏が会員に加わっていただけたことと併せて、「コンラッド研究会」が今後大いに進化する
ことを予感させるに足るうれしいニュースである。

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