Studying “Typhoon ”under the leadership of Captain Henmi

報告者:設楽 靖子

今回、専門的な解説を受けることができたのは、以下の点についてなどである。

1. この作品の主役ともいえるNanshan号は、当時の汽船として、どのような形状をした船であったと想定されるか、その中でChinese
  cooliesが乗船していた区域はどこか、などについての図解。

2. 冒頭の章で言及されるsteam windlass (揚錨機)、flat bottom, rolling chocks on bilges、lead line (測深索)、derrick (デリック装置)など
  についての図解。実際の積み込み作業や出航前の船上作業の一端を知ることができた。

3.  汽船の場合の乗務員構成、当直パターン(24時間を4時間ずつに区分したローテーションは、誰がどの時間帯を担当するかも合理的な
  理由によって決まっている)。

4. 台風に遭遇したとき、あるいは台風の目に入ったときの、実際の天候と船の状態。

5. 船舶の国籍について。この短編は、Nanshan号が「イギリス船籍からシャム船籍へ変更された」という重要なエピソードを含むが、これ
  は、便宜置籍船(flag of convenience ship)という、「その船の事実上の船主の所在国とは異なる国に籍を置く船」に関して、今日でも専
  門的論議がなされている事象のようである。
  逸見氏の近著『便宜置籍船論』(信山社 2006)はまさにこの点を論じたもので、願ってもない解説者を得ることとができた。


 コンラッドの作品を読む際に、海の世界の専門家から逐一確実な答をもらえることの有難さを、今回実感することとなった。
テキストに埋め込まれているメタファーは、読者がその暗示的要素を読み取って初めてメタファーとして機能するわけであり、航行・操船および関連の法律などについての確実な知識に接することで、コンラッドのテキストの中、それまで見えていなかったメタファーに気づくこともあるのではなかろうか。

3月24日、25日に予定されている富山での海王丸見学会も、有意義な機会となるであろう。

 

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