【2008年 1月例会(Kyoto)の事後報告】


田中 賢司(海技大学校准教授)報告

  今回(1月12日)のテーマは、
 1.Robert Hampsonとの対話報告;今後のコンラッド研究の方向性について
 2.コンラッド研究書、翻訳作業
 3.日本英文学会関西支部第二回大会の発表報告
 である。

  テーマ 1.Robert Hampsonとの対話報告;今後のコンラッド研究の方向性について

 下記は、設楽さんと社本先生よりご連絡いただいたものです

  設楽さんより

 セミナーの前半は、Achebeの“An Image of Africa”が1975年時点において、どのような文脈で発言されたのか、について。

 *Achebeが使っていたHeart of Darkness本は、Albert GuerardのIntroductionが付された1950年版のもの。

 *Guerardは1950年代~60年代においてはinfluential teacherであり、Heart of Darknessについてのspiritual voyage of self-discovery, night
  journey to unconsciousnessといったFreudianな論は、高く評価されていた。

 *1975年のポストコロニアル作家の旗手としてのAchebeが、1950年代的にinstitutionalizedされた、depoliticized readingに対抗して発言し
 たのが、この “An Image of Africa”であった、という論旨。

 後半は、An Outpost of Progress論でした。

  社本先生より

 以下、ハンプソン教授の発表を報告します。

 1.土曜日の分;「東大LACシンポジウム」のまとめ

 〈文学とテロ〉という途轍もなく大きなテーマを掲げて、東大 田尻芳樹准教授の司会で、R.ハンプソン、中井亜佐子(一橋大学)、秦 邦生
 (津田塾大学)の三者が講演をした。すべて英文による発表であるが、聴衆のために、詳細な日本語訳が予め手渡された。

 聴衆:約50名。
 会場:東京大学駒場、学際交流ホール。

 ① ロバート・ハンプソン
 タイトル:「コンラッド、アナーキスト、ヴィクトリア朝ロンドンの治安維持」

 コンラッドの小説『密偵』について、ロンドンのテロリズムと治安維持との関連で、19世紀末の英国、ロンドンの歴史をふり返りながら、論じ
 たものである。
 ハンプソン教授は大英博物館で19世紀末のアナーキストの活動とそれに対処する警察の治安維持がどのようになされたかを長期にわた
 って資料に当たって調べ上げ、『密偵』の背後関係を浮き彫りにした。

 *このようなことは日本にいる限り、研究できることではない。私たちの今後の研究法に示唆を与える発表であった。
 なお、ハンプソン教授によると、今回の発表内容を含め、これをもっと充実した形で、研究成果を本にして近いうち出版する予定である、
 とのことである。
 (次回の京都例会に、配布されたハンド・アウトを持っていきます)

 ②中井 亜佐子
 タイトル:文学はテロリズムを生むか?――サルマン・ラシュディ『悪魔の詩』

 「全世界のラシュディ・バッシングに加わった人々の多くは、膨大なテクストのうちのイスラム冒涜が疑われる箇所の部分的抜粋や要旨、
 そのアラビア語、ウルドゥ語への翻訳という形でのみ、このテクストに接していた」
 「ラシュディ事件はイスラム原理主義者が文学をよむことのできない、あるいは徹底的に「読むこと」を拒否する人々だという言説を創始し
 た」
 「しかし私、中井自身はこの小説は〈イスラム原理主義者による攻撃〉そのものを内包するテクストであると考える」

 *社本は『悪魔の詩』を読んでいないので、これ以上の紹介は避ける。
 (次回の京都例会に、配布されたハンド・アウトを持っていきます)

 ③秦 邦生
 タイトル:行為によるプロパガンダ――前衛と爆弾的想像力

 コンラッドの小説『密偵』とG.K.チェスタトンの『木曜日の男』を取り上げ、芸術家の人物像とアナーキスト=テロリストのそれとが完全な等
 号で結び付けられている、との推定を19世紀後半から20世紀初頭にかけてのヨーロッパのテロ活動と〈前衛芸術運動〉の実体を紹介し
 つつ、論証しようとした。
 (次回の京都例会に、配布されたハンド・アウトを持っていきます)

 *わたしが大学生の頃大変興味深く読んだ『木曜日の男』がこの場で取り上げられたのは大変な驚きであった。今は『木曜日の男』がど
 んな小説であったか定かではないが、とにかく面白い小説であったことは覚えている。機会があれば、再読したく思う。

 2.月曜日の分

 部屋:東大(駒場)東15号館6階演習室
 出席者:12名(?)
 司会:田尻→設楽靖子

 予定より10分遅れではじまる。
 コンラッドのAn Outpost of Progress とHeart of Darknessを詳細に批評・鑑賞 した。
 前者については〈コミュニケーションの断絶〉という観点からとらえた。
 後者についてはロンドンで田中先生といっしょに聞いた発表と重なる。

  テーマ:2.コンラッド研究書、翻訳作業

 あと2章分を残して原稿はほぼそろっている。データは現在社本先生と田中がまとまったものを保存している。

  テーマ:3.日本英文学会関西支部第二回大会の発表報告

 伝記的な発表内容だったので作品を知らない人にもわかっていただきやすかったようだ。

  《テーマ外、京都例会の今後のありかた》

 今年度の京都例会に関して、よく知られている作品・興味がわく作家研究を、わかりやすく様々な方々にも親しんでもらえるよう工夫をすべ
 きかと思う。
 関西支部第二回大会でコンラッドに関心を持ってはじめて連絡を下さった方もいらっしゃいます。
 京都例会の活動をより活発にするため、簡単なチラシをテルサの案内のところに置かせていただくなど、工夫を凝らして行きたい。

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